この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第11章 惑い
……戻ろう、ちゃんと。
戻るんだ、妹に。
それは、あらためての決意。
……だって葉月くんがあのときしてくれたことに他意なんかないのに。
私、勝手にこんなふうに自分の気持ちまで動かしちゃって──ばかだ。ほんと、ばか。
こんな気持ち知られたら、軽蔑されちゃう。
そんな意味じゃなかったのに、って。
勘違いされるくらいならあんなことするんじゃなかった、って。
葉月くんは優しいから面と向かっては言わないだろうけど……めんどくさいな、ってきっと思われちゃう────。
……やだ。
そんなの絶対にいや。
せめて、いい妹だと……せめてそう思われていたい。
私のこと、大事だって。
妹としてでもいいから、そんなふうに思っててもらいたい。
だから。
もうこれ以上葉月くんに心が動かないようにしなくちゃ。
好きって気持ち、少しずつでもなくしていかなきゃ。
……でも、それにはどうしたら────?
まるで先の見えない迷路のような感情。
どうすれば、好きじゃなくなれるんだろう。
どう考えれば、前みたいに……純粋に『兄』として葉月くんを見られるんだろう。
途方にくれる。
……好きじゃないと思えるまで、会わない方がいいのかもしれない。
そう考え、でもそれっていつまで?
いつになったらそうなれるの?
会わなきゃ、好きな気持ちは本当になくなるの?──そんなふうに結局また、わからなくなる。
出るのは、溜め息ばかり。
静かに動き出した電車。
この気持ちの終着点はどこにあるんだろう。
そもそも終着点なんてあるんだろうか──答えの出ない問いばかりを自分に繰り返しながら、私はそっと目を伏せた。