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宵闇
第11章 惑い
「ねえ村上くん! どうしたの!?」
彼は何も答えず、ただ私の腕を掴んで歩く。
何事? とでも言いたそうな顔をしている、すれ違う人たち。
「……っ!」
黙ったままの彼に、私ももう聞くのはやめておとなしくついていくことにした。
──村上くんが不意に足を止めたのは、大学の敷地内ではあるけれど人気のない静かな場所。
ようやく私の腕も解放された。
「……もう……ほんとどうしたの村上くん────」
ずっと掴まれていたところをもう片方の手でさすりながら、今度こそ答えてくれるだろうかとそう口にする。
「桜井」
振り向き、また私をじっと見る村上くん。
真面目な表情はさっきと一緒で──なぜだろう、緊張してしまう。
「なあ……なんで合コン?」
──え?
ようやく返された言葉の内容に、戸惑ってしまった。
「なんで、って……」
そこを聞かれるとは思ってなくて、返事に詰まってしまう。
それでも何か答えを探していると──村上くんが先に口を開いた。
「……やっぱ俺って桜井の恋愛対象にはなんねーの?」
「────!」
すぐにその意味に気づき、心臓が大きく波打った。
──これ、って。
どくんどくんと、その音は自分でもうるさく感じるぐらいになる。
──遠回しに……言われてる、よね?