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宵闇
第11章 惑い


村上くんの視線を受け止め続けるのがなんだか苦しくなり、たまらず俯いて息を吐く。


……足音が、近づいてきた。


「行くなよ」


すぐ近くから、かけられた言葉。


「そんなの行かないで、俺のこと本気で考えてほしい」


……本気で────。


村上くんの想いは真剣だ。
だったら私も、ちゃんと真剣に返さないといけないと思った。

うつむいたままで頷いた私は、不意に髪に触れられた感覚に弾かれたように顔をあげた。
私を見下ろしていた村上くんと目が合う。


「……マジで。頼む」


呟くような声は少し掠れていて。
……やっぱり、そんな村上くんは見たことがなくて。

その目を見つめたままで、もう一度頷いた。

ほっとしたように少し緩んだ目元。
ん、と彼も小さく頷く。


「じゃ」


私に背を向けて歩き出した彼の後ろ姿を見ながら、その場にひとり立ち尽くす。

……頭の中が、ひどくぐるぐるしていた。


村上くん────。

一緒にいるといつも楽しくて……いい人だってことは今までのつきあいでもうよくわかってる。
友達としては、間違いなく大好きな人だ。

……じゃあ、彼氏としては?


「ちゃんと……考えなくちゃ」


村上くんのことだけじゃない。
……葉月くんのことも。

村上くんの想いを知った今、もう気持ちを曖昧にしていちゃいけない。
返事をしなきゃいけないし、そのためには葉月くんへのこの気持ちにきっと何らかのけりをつけなきゃいけない。


でも、どうしたらいい?


私を好きだと言ってくれる、大好きな友達。
私が好きな、私を妹としてしか見ていないであろう人。


溜め息が、出る。


……ほんとに私、どうしたらいいんだろう────。




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