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宵闇
第11章 惑い
そう──だからきっと、そうすることが一番いいのかもしれない。
葉月くんを諦め、村上くんを選ぶことが。
望みのない想いを抱くことにいつまで私は耐えられるだろう、と考えても、答えなんて出るわけがなかった。
抱き続ければいつかは報われるというのなら、耐えられるかもしれない。
けれど、そうじゃない────。
諦めたい、と今まで何度も思った。
この想いを忘れたいと。
……でもできないまま、ずっときた。
さらに募らせるだけ募らせて、ここまできてしまった。
でも、村上くんのことが、葉月くんを諦めるきっかけに……もしかしたらなるだろうか。
──ぐるぐると、いろんな気持ちが自分の中で渦巻く。
たくさんの感情を巻き込んで、私を揺らし続ける。
「……葉月くん────……」
その名前を口にするだけで胸がきゅっと苦しくなる。
それでも、呟かずにはいられない大好きな人の名前。
……会いに行こうか────。
不意に思い立ち、立ち上がって向かった玄関。
置いてあるトレイの中からそれを取り出す。
ちゃりん……と鳴った、鍵。
……うん、葉月くんに会おう。
そして、村上くんの話をしてみよう。
葉月くんは私の背中を押すだろうか。
それとも──止めるだろうか。
まるで試すみたいなやり方だな、と自分に呆れる。
そんなの本当は好きじゃないけど、でも、もうそうするしか──そんな都合のいい言い訳で、それをする自分を許そうとしていた。
……だってもう、どうしたらいいか本当にわかんないんだもん。
溜め息をつきながら見つめる手の中のそれは、葉月くんの部屋の合鍵。
これが、葉月くんを諦めるきっかけをくれるだろうか。
……それとも────。
うまくまとまらない思いのままに、ぎゅっと握りしめる。
……明日。
目を閉じ、それでもそれだけは……決めた。