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宵闇
第11章 惑い


そして、翌日────。


葉月くんのアパートを訪ねた私は、呼び鈴を押しても反応のないドアの向こう側を想像して、小さく息を吐く。


休日の午後。
行く、という連絡はせずに、ここに来た。

一晩たてばまた、気持ちは揺らぐ。
話すために行くはずだったのが、もし会えなかったら話すべきじゃないってことなのかもしれないと、まるで賭けのようなことを考えていた。

合鍵はバッグに入っているんだから、葉月くんに連絡して、それを使って中に入って帰ってくるのを待っていればいい。
ちゃんと話がしたいならそうやって動けばいいものの、どうして私の心はそうやっていつも想いの逃げ道を用意してしまうのか────。


「……なんだか諦めたくないみたい」


自嘲気味な笑みが漏れる。
葉月くんがいないことに、ほっとしている自分が確かにいた。


だめだ出直そう──そう思い、踵を返す。


駅への道を下を向いて歩きながら、いろいろと考えた。

こうやって、会わずに……話さずに帰ること。
でも、会っても何から話したらいいかさえ、本当は考えなんて少しもまとまっていないこと。


……私はいったい何がしたいんだろう。


深く息を吐きながら、そういえば最近は溜め息ばっかりだなと気づいた。


人を好きになるって苦しい。

先輩のときは……こんなふうにならなかった。
された行為に対してはいろいろ考えたけど、先輩を好きだという感情でこんなふうになったことはなかった。


好きになっちゃだめな人への想いだから、こんなに苦しいんだろうか────。



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