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宵闇
第11章 惑い
「──で? 今日はどうしたの?」
それは、それまでの雰囲気を一変させるかのような葉月くんの言葉での切り替え。
「何かあった?」
私から少し離れ、自分の定位置に戻ってコーヒーのカップを手にする葉月くん。
ちらりと顔を上げると、私の方は今は見ていなかった。
「あ……うん」
見られていると緊張する。
ちょっとほっとした私は、そうだ葉月くんと話をしに来たんだっけ、と当初の目的を思い出した。
……なのに。
いざそうなったら──何から話していいのか頭の中が真っ白になってしまう。
うまく頭が回らない。
「……まあ、用事なんかなくても来てくれるだけで嬉しいけどね」
黙ってしまった私を見かねたのか、そんな言葉でフォローしてくれる葉月くん。
そういう優しさのひとつひとつにまた惹かれていく自分の心。
──だめ。
きゅっ、と噛んだ唇。
私は何のためにここに来たの?
どうしたくて葉月くんに会いに来たの?
これじゃ、ただ自分の気持ちを再確認してるだけじゃない。
前に進むためだったはずなのに……こんなんじゃ──だめ。
ちゃんと話さないと。
……ちゃんと、言わないと。