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宵闇
第11章 惑い


顔をあげると、ん? と、葉月くんが目で問うてくる。
ごくり、と唾を飲み込む。


「……あのね、葉月くん」


とうとう私は切り出した。


「えっと……村上くんって人、覚えてるかな」


葉月くんは、ん? と……目で私に聞き返してくる。


「……高1のときに告白されたことがあるんだけど────」

「ああ、あのときの彼か。
うん、覚えてるけど……なに? 彼がどうかしたの?」


私に向けられている視線を受け止めながら、うん──と、一呼吸置いて


「……今、その人と付き合おうかどうか迷ってるの」


それから、私はそう言った。

葉月くんはそれを聞いて、黙ったままそっと私から目を逸らすように俯く。
持ったままのカップを少し見つめてから、一口飲んで。
……それから、そう、と一言だけ言った。


その葉月くんの様子からは、特別な何かは感じられない。
私はいったい何を期待していたんだろう──そう思い、沸き上がりつつあった落胆に似た感情を無理矢理に封じ込む。
気づかれないようにそっと息を吐き、私も自分が持っているコーヒーカップに視線を落とし、話を続けた。


「なんかね……あのときからずっと私のこと好きでいてくれてたんだって。
びっくりしちゃった……だって5年もだよ!? ……私、全然気づかなかった」


そうなんだ、と──聞こえる葉月くんの声はやっぱりいつもどおりのように感じる。


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