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宵闇
第11章 惑い
「……でね、この前……また告白されたの。
ちゃんと考えてほしいって言われて……」
「うん」
「5年間、ずっと仲良くしてた人だから。
……村上くんがいい人だってこと、よくわかってて」
「うん」
「だから、大丈夫かな、って思うんだけど────……」
そこまで言って、葉月くんをそっと見る。
葉月くんも俯いたままでいたけど、私の視線に気づいたのか静かに顔をあげた。
合った視線。
優しいまなざしはいつもどおり。
そのまま葉月くんは軽く微笑んで──でも、すぐに目を伏せた。
笑みを口元に残したままで。
「……琴音ちゃんがそう思うならそれでいいんじゃないかな」
そう口にして立ち上がり、カップを手にキッチンへと歩き出す。
私に向けた背中。流しに置いたカップ。
──いいの?
その後ろ姿を見つめ、心の中で問いかける。
──本当に、いいの?
不意に振り向いた葉月くんと目が合いそうになり、反射的に逸らしてしまった。
「……それとも、まだ心配?」
いつの間にすぐそばに来ていたのか、屈みこんで私の顔をのぞき込んでくる。
途端に早鐘を打ち始めた心臓。
声を出せないまま、黙って首を振って答えた。