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宵闇
第11章 惑い
葉月くんに、村上くんのことを話してから数日後。
村上くんに再度告白された場所に、今度は私が彼を呼び出した。
約束した時間になる前に、姿を現した村上くん。
「早いね」
私のすぐ近くまで来た彼にそう声を掛けると
「桜井の方がもっと早いじゃん」
苦笑いしながら言われた言葉に、確かに……と思わず笑ってしまう。
でも、空気がやっぱりどこか少しぎこちない。
それはもちろん村上くんも感じ取っているはずだった。
答えを待つ彼と、答えを待たせている私。
仲のいい友達として接していたときとはどこか違う、微妙な雰囲気。
「……返事、聞かせてくれんだよね?」
先にそのことを口にしたのは村上くん。
そう──私はそのためにここに彼を呼び出した。
「……うん」
頷き、俯き加減で息を吐く。
それから私は言った。
『ごめんなさい』と────。
すごく、すごく考えた。
そうして、そう決めた。
葉月くんの反応から、私のことは『妹』としてしか思われてないことはわかったけど。
諦めるしかないって──それはもうわかってたけど。
だからといって、村上くんの想いに応えることはできない。
他の人を好きなのにその人への想いは報われないから、ずっと私を想ってくれてた人の方にいくとか──そんな都合のいい選び方、やっぱり失礼すぎるから。