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宵闇
第11章 惑い


──そう。
葉月くんは、私のことをよくわかってるから。
いつも、何も言わなくても、何かあったことを察してくれるぐらい……私の気持ちに敏感だから。
そんな葉月くんにこの先ずっと自分の気持ちを隠し通してく自信なんて……正直言って、あるわけない────。


……じゃあ、いっそもう?
もう会わない方がいいの?
葉月くんに会わないのがいちばんいいの?


「……う」


こみ上げてくる。
私の中から何かが一気に。


もう、だめ────。


涙が溢れて、ぽろぽろと零れた。
村上くんに腕を掴まれたままで。
耐えきれなかった。

離され、自由になった腕で膝を抱えるようにしてわあわあと……まるで幼い子供みたいに私は泣きじゃくった。


「桜井」


村上くんの声がするけど。


「このままじゃ、おまえ……」


溜め息が、聞こえるけど────。


止まらない、感情の乱れ。
……止められない、涙。


この想いをどう扱ったらいいのか私にはもうわからない。
自分の胸の中だけに留めておくには重すぎる。
いつのまにか、それほどまでに大きくなっていた。

気づかないうちに少しずつ膨らんでいた想いが、気づいたとたんに一気に私の中を支配して。
身動きがとれないほどのそれは、私を惑わせて、自分すら見失わせるほどで。


苦しい。
想いに溺れる。
息ができない。

……苦しい。


葉月くん────。

どうして、私はこれほどまでに葉月くんなの?

あんなにうれしかった妹という立場が今はこんなにもつらい。
その、優しくて、甘くて、重すぎる枷。
逃れたいのに、逃れられない。
このまま失いたくなくて。
なのにこのままは苦しくて────。



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