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宵闇
第12章 その意味
待ち合わせた店に着いた。
入り口から店内を見回すと、奥のテーブルに座っている男が立ち上がって合図してくる。
……彼か────。
そこへと歩みを進める僕を、立ち上がったままで彼は待っていた。
「すいません、突然」
目の前まで行くとそう言って頭を下げる、確かに見覚えのあるその顔。
……そうだ。高校のとき、琴音とよく話をしていた子だ。
彼女の隣でいつも笑っていた彼のこと──確かに記憶にある。
「いや、大丈夫だけど……僕の会社のこと、琴音に聞いたの?」
「はい。前に」
店員にコーヒーを頼み、コートを脱いで席に座った。
「……僕のこと、すぐにわかったみたいだけど」
「ああ……俺、高校のときずっと桜井のこと見てたから、ですかね。
……先輩とよく一緒にいたから」
だから覚えてます、と呟いた言葉に、彼も僕と同じようなことを思っていたのかと、苦笑する。