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宵闇
第12章 その意味
やがてコーヒーが運ばれてきた。
漂うその香りに誘われるようにカップを手にして一口飲む。
軽く息を吐きながらカップをソーサーに戻し、そのまま彼に目を遣った。
俯き加減だった彼も視線に気づいたのか顔を上げ、どこか挑戦的な目をして僕を見る。
何だ? とは思ったけど
「……で? 話って何?」
そんなことより琴音のことが聞きたい。
そう言って、本題に入るよう僕が促すと、彼は躊躇うことなく口を開いた。
「単刀直入に聞きますけど、先輩は桜井のことどう思ってるんですか?」
「……は?」
あまりに直球な問いかけに驚き
「何て言うか──唐突だね」
苦笑しながらの言葉。
「笑わないでちゃんと答えてください……!」
それにむっとしたような表情を見せながら、さらに聞いてくる。
何なんだいったい──そう思いながらも
「彼女は……可愛い妹だよ」
認めたくない現実を、口にした。
「それだけですか?」
それでもなお食い下がってくる彼に、いい加減少し苛立ちを覚えた。
何を言いたいのかまったくわからない。
僕が琴音をどう思っているかが、彼に何か関係あるとでもいうのか?
「……何それ。
もしかしてうまくいってないとか?」
苛つきを隠せず揶揄するような口調になってしまい、……それは僕の願望か、と口角が歪むのがわかる。
変わらず僕を真っ直ぐに見てくる彼に
「それとも琴音に何かあった?」
重ねて聞くと、少しの沈黙のあと、不意に逸らされた目。
ふ、と軽く息を吐きながら、僕も同様に逸らした。