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宵闇
第12章 その意味
彼は続ける。
「……結局、だめでしたけどね。
その人のことしか考えられないそうですよ。俺じゃだめだそうです。
それがわかった以上……もう俺とはつき合えないって、はっきりそう言われました」
それで終わりです、と。
そう言いながらコーヒーのカップを持つ指先が視界に入る。
「桜井は、先輩には何でも話すし相談にもいつものってもらってるって言ってましたけど……その様子じゃあ、このこと知らなかったんですね」
戻されたカップ。
……ああ、そうだ。
知らなかった。
何も、僕は。
琴音が彼の告白を断ったことも。
それでも、と願われ付き合ったものの、結局だめになったことも。
……他に好きな相手がいることも。
何ひとつ教えてもらってなかった。
──どうしてだ、琴音。
ぐるぐるとまわる、疑問符。
僕にだけは何でも話してくれるんじゃなかったのか?
僕は琴音の一番の理解者にはなれていなかったのか?
そう──認めてもらえてはいなかったのか?
ぐっ、とこみ上げてくる感情に、たまらず噛んだ唇。
……琴音。
膝の上で握った手に勝手に力が入っていく。