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宵闇
第12章 その意味


「……先輩」


そんなとき、かけられた言葉。
はっと我に返った。

……落ち着け、と自分に言い聞かせ、目を閉じゆっくりと息を吐く。


混乱したままの頭の中、とにかく琴音に会いに行かなければ──それだけは思っていた。
どんな話でも、僕が聞いてあげて、そうして────。


「先輩」


再度呼ばれ、ゆっくりと目を開けた。


「先輩にも言えないような相手って──いったい誰だと思います?」

「誰って────」


そんなことわかるわけがない。
彼以外の男とはあまり付き合いがなかったようだったけれど……それも僕が知らなかっただけだというのか。


「……君は知ってるの?」


僕の問いに口元を歪めながら、まあ……と曖昧ともとれる答えは


「好きな人がいるって聞いたとき、俺はすぐにわかりましたよ」


続けた言葉で、はっきりと肯定される。


「先輩は?」

「え?」

「先輩はわからないんですか?」


……その言い方。
僕を見るその顔。


「ほんとに?」


挑戦的な目。

僕は彼にとって好きな相手の兄なはず。
なのになぜこんなふうに敵対する相手を見るような目で、彼は僕を────。


そして、はあ……と、どこか呆れたような溜め息をついた彼は言った。


「じゃあ俺が何で先輩をこうやって呼び出したんだと思います?」

「……え?」

「付き合った、別れた──そんな報告のためだけとでも?」


その、苦笑い────。



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