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宵闇
第12章 その意味
「だから聞いたんですよ。
先輩は桜井のことどう思ってるのか……」
僕に言っているのか独り言なのか……ぽつりと彼が呟いた。
「……彼女は、何て?」
僕の言葉も、それに近かっただろう。
それでも彼は溜め息と共に、そうですね……と答える様子を見せてくれた。
「確か……距離を置かれたくないって言ってたかな」
「距離?」
意味を問うと
「自分は妹としか見られてないから、好きだなんて言ったら距離を置かれてしまう。
少なくとも今の関係のままなら先輩からよそよそしくされたりしなくて済む。
今までのように仲のいい関係をなくしたくないんだと……そう言ってました」
「そんなこと────!」
咄嗟に反論しかけて、はっとした。
……そんなこと、なんかじゃない。
だって僕こそが思っていた。
自分は兄という存在でしかないと。
好きだと口になんかしたら、距離を置かれてしまうに違いないと。
……そうだ。
彼女と出会って間もないときも思っていたじゃないか。
僕たちは似ていると。
……けれどまさかこんなところまで────。
「勝手に気持ちを先輩に伝えたりなんかして……たぶん俺、あいつから恨まれると思います」
それでも、と。
「何て言うか……もう見てられないんですよ……。
気持ち知られたら先輩に拒絶されるに違いない。だからこのまま妹のままでいいとか言って……自分でももう限界だってわかってるはずなのに」
彼が話す琴音の気持ち。
黙ったまま、聞いた。