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宵闇
第12章 その意味
「そりゃ赤の他人同士とは違って義理でも兄妹だから面倒なことは多いかもしれないし、だめでも関係が切れない状態ってのは……想像してる以上にきついのかもしんねーけど」
琴音を思いながら、聞き続けた。
その苦しみを自分のそれへと重ねながら。
「でも好きになったらもうしょうがないじゃないですか……なのに……」
なのにあいつ──そう繰り返しながら、端正な顔を歪める。
……彼は琴音を本当に好きなんだろう。
僕にはそれが痛いほどわかった。
「だめならだめってわかった方がきっと桜井も前に進める。
……中途半端な状態って、たぶん一番きついから……」
彼もまた──そんな状態なのだろうか。
なんとなく、そんな気がした。
「……村上君」
彼の視線が僕に向くのを待ち、続けた。
「君はどうしてそこまで?
ずっと琴音のことが好きだったんじゃなかったのか?
なのにまるで応援するような言い方────」
その瞬間、彼は顔をさらに歪めた。
苦しそうなその表情は、どこか怒りのそれにも似ている。
「……好きですよ」
まるで吐き捨てるように
「好きだからですよ……!」
僕を睨むようにしながらそう言い切る。
「俺は卑怯ですから。
先輩にその気がないなら、それ早くわかった方が助かるんですよ」
一瞬意味がわからず戸惑ったものの、自分なりに解釈した答え。
「……それは、琴音が君を好きになるまで諦めずに待つ、ってこと?」
否定も肯定もせず、彼は強気な態度で挑むように言った。