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宵闇
第12章 その意味
「だって今の桜井、俺が何言っても先輩のことしか考えられないみたいですから。
……でも、望みがないってわかればもう諦めるしかないだろうし。
もちろんバラしたことは責められるでしょうけど、俺──そういうの全部背負う覚悟あるんで」
迷いのない目で僕を見る。
──琴音。
こんなに想ってくれる彼を選べば、間違いなく幸せになれるだろうに。
それでも君は──僕を選んでくれるのか。
「……わかった」
その視線を受け止めながら
「正直に答えるよ」
静かに口にした。
僕の想い。
ずっと……誰にも言うことのなかった、言うことなどないと思っていた琴音への想い。
「君に彼女を渡すつもりはない」
その目が見開かれる。
「僕はずっと琴音を想ってた。
きっと……琴音がそう思うよりも前から、ずっと」
ずっと、彼女が好きだった────。
目の前の彼が、目を閉じる。
大きく息を吐きながら椅子にもたれかかった。
「琴音も僕と同じ気持ちだというなら僕はもう我慢しない。
……渡さないよ、悪いけど」
そう──君にも、誰にも。