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宵闇
第13章 衝動
「……あの、葉月くん?」
それでも、それを隠しながら
「なんかそういうことになったから……えっと、どうしよう?」
『うん、じゃあうちの最寄り駅まで来られる?
駅まで迎えに行くよ』
「わかった……じゃあ乗る電車わかったら時間メールするね」
『待ってる』
ん、とそこで切った電話。
すかさず加奈が話しかけてきた。
「ねえねえ琴音! 桜井先輩、何の話だろうね!?」
「うん……」
本当に、話って何だろう。
こんないきなり。メールとかじゃだめだったのかな。
……会いたいって言われるのはもちろん嬉しいけど、でも、葉月くんを前にすると自分の気持ちを悟られないように振る舞わなきゃって思うから、今は少しだけ、それが苦しい……。
「あとでちゃんと話聞かせてよね!」
うん、と頷くと、加奈はにっこり笑って返してくる。
この前、加奈には全部話していた。
村上くんと別れたこと。
その理由が葉月くんだということ。
加奈は、気づかなくてごめんね、と私を抱き締めながら泣いてくれた。
そして私がどんな結論を出したとしても、応援してくれると────。
「……私って、ほんと友達に恵まれてるよね」
ぽつりと呟くと、やっぱり私を抱き締めてくる。
「だって私、琴音が大好きだもん!」
「加奈……」
「もちろん村上もね!」
──村上くん。
あんなことがあったから、もう避けられても仕方ないと思っていた。
なのに会うと必ず声をかけてくれ、前とぜんぜん変わらない様子で私に接してくれる。
……本当に、いい人。
「ありがと。じゃ、行ってくるね」
「うん! がんばれ琴音!」
解放された身体。
にやにやしながら加奈は続けた。
「無断外泊とかしちゃっても全然おっけーだからね!」
「やだもうっ」
苦笑しながら、じゃあね、と加奈と別れ、葉月くんとの待ち合わせ場所に行くために、私は駅へと向かった。