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宵闇
第13章 衝動

本当はずっと言いたかった。
言いたくて仕方なかった。
ようやく言えた、という思いと、とうとう言ってしまった、という思い。
それは安堵なのか、後悔なのか──ごちゃごちゃな頭の中、それでもそれだけは間違いのない本当の気持ちだった。
消そうとしてもどうしてもできなかった、私の想いだった。
ふっ、と……葉月くんの腕が緩められた。
口元に当てていた私の手を掴み、そっと避けさせる。
指先で拭ってくる、涙。
その指先がそのまま私の唇にそっと下りてきて、触れて……形をなぞり、離れていく。
そして不意に感じた、唇への柔らかい感触。
え、と目を開けると、葉月くんの顔が間近にあった。
口づけられているのだと気づき、思わず息を止めた数秒────。
……やがて離された唇。
すぐにまた触れそうな近い距離を保ったまま、葉月くんが呟いた。
「……僕も」
また、唇を指先でなぞりながら。
「僕も好き」
その言葉を。
「琴音が、好き」
信じられない、そんな言葉を。

