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宵闇
第13章 衝動


「でもそういうの全部なくして考えたら……もう葉月くんのことしか考えられない自分がいて。
私、葉月くんのことが好きなんだって気づいたらもうだめで……とにかくもうそれしか考えられなくなって……」


……でも。


「……っ、でも……こわくって。
葉月くんは私を妹としか見てないって思ってたから、気持ち知られたら嫌われちゃうとか、距離置かれちゃうとか、そういうのばっかり考えちゃって……こわくて、何も言えなくてっ……」

「うん」


葉月くんが身体を私の方へ伸ばしてくる。
零れた私の涙を右手で拭ってくれた。


「たぶんきっと自覚がなかっただけで……ほんとはずっと──ずっと葉月くんのことが」


そのまま撫でられる頬。
包み込まれる。


「好き……」


視線を、葉月くんに向けた。
私の手を握り、頬に優しく触れてくれている彼に。

その目は私を見ている。
視線が絡み合う。


「────っ……!」


たまらなくなった私は衝動的に葉月くんに抱きついた。


「琴音……」


一瞬戸惑ったように私の名前が呼ばれる。
でも、すぐに抱き締め返された。


「好き……好き……」


何度もそれを口にする。


だってもう隠さなくていいんだよね?
言ってもいいんだよね?
ずっとずっと言いたかった言葉。
葉月くんのことが好きって、本当にずっと伝えたかった────!


葉月くんは、僕も好きだよ、と答えてくれた。
嬉しい、と言ってくれた。
その言葉が幸せすぎて、もっともっと聞きたいって思った。


──それなのに。


「……琴音。ひとつ聞いていい?」


葉月くんが、そっと身体を離し


「琴音に覚悟はある?」


私の目を見て、静かにそう言った。




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