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宵闇
第13章 衝動


答えに迷いなんてなかった。


ママやお父さんにたとえ反対されたって、葉月くんを失うことだけはどうしてもいや。
それしかわからないけど……でもそれがきっといちばん重要な気持ちだと感じた。


「覚悟がないんだったら……今のうちにやめた方が────」


無理矢理に絞り出しているかのような苦しそうなその呟き。
私は思わず口を開いていた。
考えたわけでもないのに、勝手に言葉が出てきた。


「葉月くんがいればいい」


私を見る葉月くんを、見る。


「誰に反対されたって葉月くんがそばにいてくれるなら……私、もうそれだけでいい」


そう。葉月くんが私を好きだと言ってくれるのなら。
葉月くんが私を選んでくれるのなら。
葉月くんの気持ちを全部私がもらえるのなら────。


「覚悟ってなに?」


そんなの、関係ない。


「葉月くんを好きなだけじゃだめなの?」

「琴音……」


葉月くんが、私に言ってくれた気持ち。
私の気持ちも葉月くんに届いてほしい。
それだけしか考えられなかった。


「葉月くんを好きな気持ちはほんとだし、絶対変わらない。
……どんな葉月くんだって、好き」


気持ちが高ぶり、葉月くんの服を両手でぎゅっと掴んだ。


「それだけじゃだめ? 足りない?」


葉月くんが欲しい。
葉月くんの、心も身体も……その存在すべてが欲しい。
叶わない願いだと思っていたものが、今、手の届くところにある。
それを諦める? 失える?
そんなことできるわけがないと思った。


内から沸き上がってくるそれらの感情は、きっと欲望と呼ばれるものに他ならないだろう。
私の中にもあるんだと知った。
きれいなだけじゃなくて、ぐちゃぐちゃした……そういう気持ちが。


でも。
──でも。



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