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宵闇
第4章 琴音

翌日────。
「ごめんなさい」
村上くんを呼び出し、そう言って断った告白。
それを聞いた彼は、溜め息をつきながら
「あー。やっぱだめかあ……」
と、項垂れた。
「……ごめんね」
思わず繰り返した私に
「いや、まあ……たぶんそうかなって思ってたし」
やっぱり下を向いたままで、そう返してくる。
「……ごめんなさい」
断るって、こんな気持ちになるんだ──なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいの私はただ謝ることしかできなかった。
そのとき、少し顔をあげた村上くんの口元が少し緩んだのに気づく。
「なんか桜井さん、謝ってばっか」
そのまま視線を合わせられ、真っ直ぐに見つめられた。
「あ、そう……だね」
逸らせずにそのまま受け止めたものの
「好きな人いるの?」
突然そんなふうに聞かれて
「──え!? あ、いない! いないよっ」
思わず両手をひらひらと振りながら答えた私の変な焦り具合がおかしかったのか、村上くんは笑いながら、そっか、と言った。
そして、そのままの表情で続けられた言葉。
「……じゃあさ、友達からでいいから」
「え?」
「友達としてゆっくり俺を見てよ。
そしたらいつか、桜井さんの気持ちだって変わるかもしれないし」
話しているうちに真面目な顔に変わっていく。
冗談でもなく、本気で言ってるんだってすぐにわかった。
「……あ、うん。友達としてなら────」
その言葉すら拒むなんて、さすがに私にはできなくて。
「ありがと、桜井さん」
そんなふうにほっとしたように微笑んで呟いた村上くんに、いつのまにか私もつられて笑い返していた。

