この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第4章 琴音

自分の教室に戻ると、加奈がにやにやしながら近づいてきた。
「村上、やるねー」
「え? なに?」
「桜井先輩が目を光らせてるっていうのに。
告るなんて思い切ったことするわー」
「葉月くん?」
え? なんでここで葉月くんが出てくるの?
「桜井先輩、にらみきかせてるらしいよ。
琴音によからぬ男が近づかないように!」
「よからぬって……うっそだあ!」
「ほんとほんと! 桜井先輩と友達の加藤先輩って人がうちの部にいるんだけど、私が琴音と仲良しだって知ったらそう教えてくれたもん」
「えー……ほんとに!?」
葉月くんがそんなふうに──恥ずかしいような、でも大事にされてるのがわかって嬉しいような、なんだか変な気持ちになる。
「……そんなことしなくたって、私もてないのにな」
呟いた瞬間、は!? と呆れたように声を漏らした加奈は
「琴音はもてるって! かわいいし、優しいもん。でもみんな、桜井先輩を警戒してて近づけないんだって。
だから先輩が卒業した来年以降とかきっと大変だよ~」
そう言ってにやにやと私を見てくる。
「もう……加奈、大げさ!」
「大げさなんかじゃないって~」
否定を苦笑いで流し
「でもそっかー。村上もあのとおりだからもてるけど、今まで彼女作んなかったのは琴音ねらいだったからかあ~。ま、納得!」
腕組みしながら、うんうん、と頷く加奈の言動を見てはやっぱり苦笑しながら、彼のことを考えた。
……村上くん。確かに。
ルックスもいいし、明るくて。かなり人気者っぽい。
そんな人から好意をもたれて悪い気はしない。
かといって、つきあうとかはやっぱり違うんだけど────と。

