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宵闇
第13章 衝動
「……琴音」
優しく頬を撫でてくる指先に、そっと目を開けた。
心配そうに私を見下ろす彼と、目が合う。
涙を堪えようと、自分の顔が歪むのがわかった。
……いま、私を抱こうとしているのは先輩じゃなくて大好きな葉月くんだ──そう自分に言い聞かせた。
でも、どうしても漠然とした不安が消せない。
セックスに……挿れられることに対する不安が。
「……痛いの、や……」
たまらず口にすると、葉月くんが目元に触れてくる。
反射的に閉じた瞼からこぼれた涙が指で拭われた。
「優しくするよ?」
葉月くんが言ってくれる。
でもそんなのわからない。
だからどうしても漠然としたこわさが消えない。
何も答えることなんてできない。
「じゃあ──やめる?」
でも、そう言われたとき反射的に首を振ってしまった。
何度も……何度も。
矛盾してる自分の態度。
こんなの葉月くんだって困る。
それも、わかってる。
「う……っ、く……」
もうどうしたらいいのか本当にわからなくなる。
自分のわがままさに呆れていた。
葉月くんが優しいのをいいことに甘えきってる。
まるで駄々をこねる子供みたいに。