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宵闇
第13章 衝動
「琴音」
葉月くんの優しい声が耳に届く。
「無理しないで。
……琴音が嫌なことはしたくないから」
ね? と、頬に触れる指先もやっぱり優しい。
「葉月……くん……」
思わずその名を呼ぶと、私の身体に寄り添うように横になりそのまま抱き締めてくれた。
大丈夫だよ、と撫でてくれる頭。
応えるように私も横を向き、葉月くんを抱き締め返した。
その拍子に足に当たった硬いもの──葉月くんが、ごめん、と呟き腰を引く。
──なんで。
葉月くんのその動作に、そんなことをさせてしまう自分が本当に嫌になった。
──なのになんでそんなに優しいの。
「優しいとかじゃなくて……琴音が好きだから大事にしたい。ただそれだけだよ」
葉月くんが不意に呟いたことで、私はそれを声に出していたことを知る。
……葉月くん。
ぎゅっ、とさらに強く抱きついた。
再び足にそれが当たり、逃げようとした葉月くんに自分から身体を押し付ける。
「……っ、琴音……」
はあっ、と耳元で聞こえた吐息。
速い、心臓の鼓動。
葉月くんは我慢してくれてる。
私のために、そうしてくれてるんだ。
思えばあのときだってそう。
初めてふれられたとき──あのときにはもう葉月くんは私のことを想ってくれていたという。
なのに、私だけ気持ちよくしてくれて。
自分は……我慢してくれた。
いつもそう。
葉月くんはいつも私優先で。
私のいやがることなんて絶対にしない────。