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宵闇
第13章 衝動


──乗り越えたい、そう強く思った。
それは自分のためというより、葉月くんのためにと言った方が当たってるかもしれないけど。

あのときの気持ちなんてもう忘れたい。
そして大好きな葉月くんと深く繋がりたい。ひとつになりたい。
全部、葉月くんのものになりたい──そういう思いが、ちゃんと私の中にある。
そして葉月くんは私をこんなにも大事にしてくれる。

だからあのときとは違う。
絶対に、違う────。


ごくり、と飲み込んだ唾液。


「……ごめんね葉月くん……大丈夫だから続き、しよ……」


胸元に顔を埋めたままで、そう口にした。


「でも琴音────」


なおも私を気遣いそうな言葉が発せられる前に


「お願いもう忘れたいの……!」


そう言って遮った。
葉月くんが息を飲む気配。


「あんな記憶……っ、もう……だから────!」


だからお願い。
お願い……葉月くん。
弱い私だけど、でも葉月くんのためにも強くなりたい。
なっていきたい。
こんなこと──もう乗り越えたい。いつまでも引きずっていたくない。


「……わかった」


私の決意が伝わったのか、葉月くんは願いを受け入れてくれた。
身体を起こし、私に覆い被さるようにしながら続ける。


「優しくするから」


その目を見つめ返しながら、頷く。


「琴音の中から僕が必ず消してあげる」

「え……?」


何を──そう思ったとき、葉月くんが低い声で呟いた。


「そいつの記憶」


……と────。




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