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宵闇
第13章 衝動


「それどころか、あんなことひどいって──先輩のこと心の中でいつも責めてた。
自分のこと棚に上げて先輩だけを悪者扱いしようとして……っ……」


葉月くんのことが好きって気づいてから、わかった。
葉月くんとこうやって身体を重ねて、ようやく気づいた。


「……っ、でもほんとは私……先輩のこと好きでもなんでもなかった────……!」


認めてしまった。
……認めざるを得なかった。


「だって葉月くんへの想いと全然違うんだもん……!
私は先輩のこと、好きだと思いこんでただけに過ぎなかったんだ、って……今頃になってやっと気づいたの……」


自分だけが可哀想だと思っていた。
自分だけが苦しいんだと思っていた。
先輩の苦しさなんてわからなかった。
考えられなかった。
……考えようともしなかった。


「だからあれは自業自得……。
先輩の言ってたことは正しかったんだから……私はどう扱われても文句なんて言える立場じゃなかったんだから────」

「それでも……!」


黙っていた葉月くんがそこで初めて言葉を発した。
抱き締める腕に力を込めて、私の言葉を強く遮る。


「それでも琴音は悪くない────」


耳元におとされた、深い息。


「琴音は琴音なりにちゃんとそいつのことが好きだったんだと思う」


諭すような口調で


「僕に対する気持ちとは違ったとしても何かしらの感情はあったんだよ。
……何もなかったなんてことはないと思う。
ただ、そいつが求める『好き』ではなかった──それだけのことだよ」


私をそう、庇ってくれる。


……でも、そんなふうに考えていいのだろうか。
それはあまりにも自分に都合よすぎはしないだろうか──目を伏せながら、思った。



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