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宵闇
第13章 衝動


「琴音」


葉月くんが、私の手の指と自分の指とを絡ませた。


「……それとこれとは別なんだからね?」


……え────?


意味がわからずに、振り向いて彼を見た。


「それが……犯していい理由になんて、絶対にならない」


私の視線を受け止めながらも、苦しげに細められた目。


「葉月く……」

「そこ間違えないで。
求められてた好きに応えられなかったことにどうしても罪悪感を感じるのなら、そこにだけ感じればいい。
けど──無理矢理されたことまで自分のせいにする必要なんかない。
それが何をされてもいい理由になんてなるわけないんだ」


……きっぱりと言い切られ、潤んでくる目元。
葉月くんの顔が、揺れていく。


「──わかった?」


瞬きをすると、それはまた、鮮明に戻った。


……葉月くんは私に甘すぎる────。


嬉しいのに戸惑いもある──そんな説明のつかない感情に、黙ったまま、彼を見つめ続けた。


「わからない?」


頬を拭うように動かされた指先。
咄嗟に閉じた目。


「だって……」

「だって何?」


言ってごらん? とでも続けそうな口調に


「だって葉月くんにかかると……私、自分の悪いとこがなくなっちゃうみたいで……」

「仕方ないよ。ないんだから」

「そんなこと────……!」


咄嗟に反論したくなったものの続けられる言葉がすぐには思い浮かばず、結局唇を噛むようにしながら口を閉じた。

撫でられる、頭。
私の髪を絡めるようにして優しく遊ぶ指先。
飽きもせず、葉月くんは静かにそれを繰り返す。
……まるで私の心をも撫でられているような気がした。


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