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宵闇
第14章 彼ら


「村上くんがいなかったら私たちきっとずっとまだ片想いのままで」

「……こら」


突然降ってきたその声。
弾かれたように振り向くと


「俺のいないとこで、俺の話で盛り上がってんじゃねーよ」

「村上くん……」


いつもどおりに、いつもみたいに、村上くんがそこにいた。
当たり前のように、私たちのいるテーブルに座る。


……加奈も、もう全部知っていた。
村上くんがずっと私を好きでいてくれたこと。
つきあったけど、すぐに別れたこと。
そして私のために、葉月くんと話をしてくれたこと。
それをきっかけに、私と葉月くんが結ばれたこと。
……だからなのか、ちょっと気まずそうに私たちに視線を送ってくる。


「────で?」


村上くんが、口を開いた。


「さっきちょっと聞こえはしたけど──俺にはちゃんと聞く権利あるよな?」


まっすぐに、私を見てくる。


「……うん」


私も、その目を見つめ返して


「葉月くんと両思いだった」


ちゃんと、言った。

黙ったままで私の視線をしばらく受け止めていた村上くんは、やがて、……あっそ、と呟いて視線をそっと逸らした。


「──あ、あのさ、ちょっと私……飲み物買ってくる!」


少し慌てたように加奈が口を挟んだ。
いつものでいい!? と席を立つ。


「あ、ありがと……」

「いいのいいの! ふたりとも待っててっ」


私たちに背を向けて足早に歩き出す。
苦笑いしながらそんな加奈を目で追った彼に


「……村上くんのおかげだよ」


そう、さっきの言葉の続きを伝えた。
彼の視線が私へと戻る。



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