この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第14章 彼ら
「村上くんがいなかったら私たちきっとずっとまだ片想いのままで」
「……こら」
突然降ってきたその声。
弾かれたように振り向くと
「俺のいないとこで、俺の話で盛り上がってんじゃねーよ」
「村上くん……」
いつもどおりに、いつもみたいに、村上くんがそこにいた。
当たり前のように、私たちのいるテーブルに座る。
……加奈も、もう全部知っていた。
村上くんがずっと私を好きでいてくれたこと。
つきあったけど、すぐに別れたこと。
そして私のために、葉月くんと話をしてくれたこと。
それをきっかけに、私と葉月くんが結ばれたこと。
……だからなのか、ちょっと気まずそうに私たちに視線を送ってくる。
「────で?」
村上くんが、口を開いた。
「さっきちょっと聞こえはしたけど──俺にはちゃんと聞く権利あるよな?」
まっすぐに、私を見てくる。
「……うん」
私も、その目を見つめ返して
「葉月くんと両思いだった」
ちゃんと、言った。
黙ったままで私の視線をしばらく受け止めていた村上くんは、やがて、……あっそ、と呟いて視線をそっと逸らした。
「──あ、あのさ、ちょっと私……飲み物買ってくる!」
少し慌てたように加奈が口を挟んだ。
いつものでいい!? と席を立つ。
「あ、ありがと……」
「いいのいいの! ふたりとも待っててっ」
私たちに背を向けて足早に歩き出す。
苦笑いしながらそんな加奈を目で追った彼に
「……村上くんのおかげだよ」
そう、さっきの言葉の続きを伝えた。
彼の視線が私へと戻る。