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宵闇
第14章 彼ら


「村上くんがああやって動いてくれたから────」

「は?」


何で俺? と、苦笑いを口元に浮かべたままで。


「俺が先輩に話したのは自分のためだし。
……桜井のためなんかじゃねーよ」

「村上くん……」

「気持ちバラして、おまえが早く振られればいいって思っただけだから。
……なのに先輩もおまえのことが好きだって言うじゃん。は? ってかんじだよな~」


また、視線が逸らされた。


「なんか結局ふたりの後押ししたみたいになるとか、マジで不本意だわ……」


あくまでも自分のためだったと言い張る村上くんだったけど、でももう私にはわかってる。
村上くんがどんな思いで動いてくれて、どうして今、こんなことを私に言うのか。
そう──全部、わかってる。


「……うん」


だから、それだけを返した。
それだけで、きっと伝わると思った。


「……あーあ!」


溜め息をついた彼が、苦々しげに私を見た。


「ざまーみろ、って言ってやんの楽しみにしてたのにこれだよ……ったく」


その大袈裟な表情と口調に思わず笑ってしまうと、村上くんも、ふっ……と素の笑顔で応えてくれた。


「……もうふらふらすんなよな。
おまえがそんなだと気になってしょうがねー」

「え~? ひどい!
私ってそんなだった!?」


もう! と笑いながら答えると、村上くんも、自分で気づかないのは重症だな、といかにも困るといったような口調でさらに返してくる。
ふたりで吹き出すように笑って──しばらく、そうして。


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