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宵闇
第15章 溺れる


「ただいま」


玄関のドアが開く音と同時に、葉月くんの声が。


──え!?
もう帰ってきたの!?


時計を見ると、まだ22時だった。
もっと遅いと思いこんでいた私は焦りながら部屋着を手に取る。


……コンコン、と洗面所のドアがノックされた。


「ただいま。琴音、お風呂なの?」

「あ……おかえりなさい!
うん、あがったからいま出るねっ」

「ははっ、ゆっくりでいいよ」


うん、と答えながらワンピースタイプのそれを身に付けた。
あの下着をつけっぱなしだけど、それは葉月くんがお風呂に入ったときにでも着替えよう、と考えながら。


ドアを開けると、ワイシャツ姿の葉月くんが振り返った。
琴音、と優しく笑う彼のもとへと、まるで引き寄せられるかのように近づく。


「おかえりなさいっ」

「ただいま」


葉月くんの笑顔。
きゅんときてしまった私はたまらずその腕をとった。


「もっと遅いのかなって思ってたから嬉しい!」

「琴音に早く会いたくて、仕事急いで終わらせてきたんだ」

「そうなの?」


ふふっ、と勝手に顔がほころんでしまう。


「……髪、いい匂い」


不意に抱き寄せられ、頭を撫でられた。


「だって洗ったばかりだから」

「ん。この匂い、いいね」

「ほんと? 桜の香りのに変えてみたの」


えへへ、と葉月くんを見上げた私に彼の唇がおりてくる。
ちゅっ、と触れるだけのそれだったけど私の心臓は、どくん……と大きく反応した。


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