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宵闇
第16章 囚われる


「葉月くん……Sでしょ!」

「え?」

「そういう人のこと、そういうんでしょ?」


いじめるのが好きな人──そういうふうに言うって私、知ってるもん。


「僕がS? そんなことないよ。ノーマルだって。琴音が痛がってる姿なんて見たくない」

「だからそういうんじゃなくてっ……!
その……だっていつも意地悪言うもん……」

「ん? 僕、言ってる?」


こくん、と頷くと


「どんなとき?」

「え?」

「僕がいつ意地悪言うの?」


矢継ぎ早に返され、言葉に詰まる。


「言ってくれなきゃわかんないな。
……だって自覚ないし」

「ええっ!? 嘘だあ……!」

「ほんとだよ。だから教えて?」


また顔を覗き込まれる。
う……と、口にすることに若干の恥ずかしさを覚えたけれど、それでも私は言った。


「……焦らしたりするもん」

「焦らす?」

「あと……えっちなこと言うし」

「言ってる?」


頷くと


「……ただ聞いてるだけだけどな」


答えはまた、耳元で。
かかる息に勝手にびくっと身体が反応した。


「今、琴音のこの部分がこうなってるけどどうしてほしい? ──そう聞いてるだけでしょ?」

「────っ!」


自覚ないとかやっぱり嘘だし……!
わからないふりして、そんなふうに聞いてくるなんて。


「……そ、そういうのも意地悪だと思う────」

「どうして? セックスはふたりが気持ち良くなるためのものでしょ?
琴音がしてほしいことしてあげたいし、気持ちよくなってる琴音を見られたら、僕も嬉しい。
だから、聞きたい。それって意地悪に入るの?」

「う……」


そんなふうに言われると──と、私はまた言葉に詰まってしまった。
何も言い返せず、んん……と呻くしかできない。


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