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宵闇
第16章 囚われる


唇が離れたあと、葉月くんは少し乱れた呼吸のままに言った。


「……そんなふうに聞こえた……?」


はあ……と、伴った溜め息。


「琴音を誰と比べるっていうの」

「だって────」

「僕には琴音だけだって何度も言ったよ?」


……わかってる。
葉月くんからすごく愛してもらってること。
ちゃんと、わかってる。


「……ごめんなさい」


だから素直に謝った。


「別に……疑ってるとかそういうんじゃなくて」


なんだろう、この気持ち。
これはなんて言うんだろう。
なんて言えば葉月くんに伝わるだろう。


「その……なんか、いやで……」

「いや?」

「……っと……葉月くんの、そういうとこ。
私のほかにも誰か知ってる人がいるっていうのが」


だって私の葉月くんなのに。
葉月くんは私だけのものなのに。
葉月くんが、私にするのと同じように他の誰かにしていた、って想像すると、すごく……ものすごくいや────。


「……気になる?」


静かに聞かれ、私は大きく首を振った。
嘘だったけど。
本当は気になって仕方なかったけど。
気になっていたからこそ、あの言葉にこんなにも過剰に反応してしまったんだろうと思ってはいたけど。


「気になってるなら話すよ?」


聞きたいような、聞きたくないような──よくわからない。


「……琴音とこうなる前、それなりに経験はあったけど」


話し始めた葉月くん。
積極的に止めようという気は起きない。
なら私はやっぱり聞きたいんだろうか。


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