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宵闇
第16章 囚われる

「でも……セックスのときにこんなふうになったことはないよ?」
優しく私の髪を撫でてくる手。
「琴音として、初めてそんなふうに思えたんだ。
ふたりで一緒に気持ち良くなりたいとか。僕にされて気持ちよさそうな琴音の顔がもっと見たいとか──そんなふうに」
『私がはじめて』という言葉に、胸がぎゅっと苦しくなった。
けれどそれはいやな感じではない。
むしろ、甘さを伴ったものだった。
「でもそれが琴音には意地悪に思えた?」
私はまた、大きく首を振った。
「ごめんなさいっ……」
そして、そう口にする。
「ん?」
私の言葉の意味がわからなかったのか、葉月くんが聞いてくる。
だって。
……だって私────。
「だってほんとはいやじゃないんだもん……」
前に回されている葉月くんの腕をぎゅっと掴んだ。
「その……そういうのされたりとか、言われたりとか……そんなふうにしてくる葉月くんも、ほんとは好き……で」
途切れ途切れの説明。
うまく言葉にできてるだろうか。
葉月くんにちゃんと伝わってるだろうか──そんなふうに思いながら、必死で紡いだ言葉だった。
「……知ってるよ?」
「えっ?」
「琴音の反応見ればわかるって」
ふっ、と緩めてくる彼の口元。
「だからなおさら苛めたくなる」
優しい笑みで、そんな言葉を口にする。
何かを期待したのか私の心臓が大きく跳ね、そのまま早く動き始めた。

