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宵闇
第18章 動き出す
「年頃の男女が一緒に暮らしてたんだ。
勘違いすることもそりゃああるだろう」
「──っ……違う!」
勘違い、という言葉を耳が捕らえた瞬間、思わず声を荒げてそれを否定した僕を見る父さんの目は、やはり静かで。
「いいから最後まで聞け」
そう、諭すように続ける。
「……おまえが言いたいのは、勘違いなんかじゃないと──そういうことだろう?」
父さんと目を合わせ、頷く僕になおも。
「悩んだか?」
重ねて、聞いてくる。
思ってもみなかったその問いに、戸惑いながらも口を開きかけた僕の言葉は
「……まあおまえのことだ。悩んだだろうな。
悩んで悩んで……その末にこっちに帰ってきたんだろう?」
それを見透かすような父さんの言葉に、形になる前に消えていった。
……僕は俯いて、小さく安堵の息を吐く。
その言葉だけで、わかったんだ。
父さんが、僕の数年間の葛藤を理解してくれたことを。
「あの子は本当にいい子だから、おまえが好きになるのも無理はない。
むしろ、あの子を選んだお前の目は確かだと、そう言いたいぐらいだよ」
「父さん……」
「琴音も?
あの子もおまえが好きなのか?」
顔をあげて目を合わせ頷くと、父さんの視線が僕を射るようなものへと色を変えた。