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宵闇
第18章 動き出す
書斎を出てリビングへ戻ると、キッチンにいた雪乃さんが僕に気づいて
「お父さんとは話終わったの?」
そう、声をかけてきた。
小さく頷いて答え
「雪乃さんも──いいですか」
そう続けると、濡れているのであろう手をタオルで拭いてから、リビングへと来てくれた。
「私に話があるなんて珍しいわね」
三人がけのソファーの端へと座る雪乃さん。
僕も、雪乃さんから少し距離をおいて腰掛ける。
うん、と横にいる雪乃さんを見ながら、彼女の名を口にした。
「琴音ちゃんのことだから」
「……琴音の?」
あらたまっての言葉に何かよからぬことでも想像したのか、雪乃さんの顔が少し強張る。
「え? 何……あの子に何かあったとか?」
そのまま僕を真っ直ぐに見てくる母親の目。
僕はその視線を受け止めたまま、口を開いた。
「実は──彼女が大学を出たら一緒に暮らしたいと思ってて」
「……え?」
琴音を思わせる大きな目が、ぱちぱちと何度も瞬きを繰り返す。
「え……どうして?」
意味がわからないといったような表情で
「どうして……琴音と葉月くんが一緒に暮らすの?」
そんな、当然であろう反応をした。
ごくり、と飲み込んだ唾液。
自分が緊張しているのがわかる。
それでも────。