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宵闇
第18章 動き出す
「僕たち、付き合ってるんです」
それを言わなければ。
理解して、受け入れてもらわなければ。
「結婚の約束ももう」
している、と言い終える前に雪乃さんが突然ソファーから立ち上がった。
僕に背中を向けながらの落ち着きのない仕草に動揺が見てとれる。
「雪乃さ────」
「……ちょっと待って……!
だって──だってあなたたちは……!」
振り向いた雪乃さんのその表情────。
……言いたいことはわかる。
それは今まで自分でも自身に何度も問いかけてきたことだから。
「わかってる。
──でも、結婚することに問題はないはずで」
「それはそうかもしれないけど!」
反論しようとした言葉がそこで切られた。
また僕に背中を向け、雪乃さんは続ける。
「……琴音が葉月くんのこと慕ってるのはわかってる。
あなたたちがすごく仲良しなのもよく知ってる。
……でも……でも、そんな。
いきなり来て、ふたりが付き合ってるとか、結婚とかそんなこと言われても────」
深く、長い溜め息を伴う、戸惑いの言葉。
「……とにかく、急な話すぎて」
まるでそこで話を終わらせようとしているかのようにも感じ取れる口調に、僕は食い下がった。