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宵闇
第18章 動き出す
「葉月くんとはそれから────。
……それでもいいわよね?」
僕は、頷いた。
頷きながら、はい──そう答えるしかなかった。
「……でも、いったいいつから?」
「え?」
「いつからそういうことになってたの?
もうずっとふたりは付き合ってたの?
ここで一緒に住んでた頃からなの?」
「いや──僕がこっちに帰ってきてからです」
「……じゃあ……まだそんなに経ってはいないってこと?」
「──っ、でも……!」
咄嗟に口が動いた。
付き合いがまだ浅いんじゃないかとか、そんなふうに思われたくない────。
「ずっと……何年ももう、僕は琴音ちゃんが好きだったから……!
決して半端な気持ちで付き合ってるわけじゃないです!」
僕はもう琴音しか考えられないから。
彼女以外の女の子を好きになれるなんてとても思えないから。
琴音しか、無理だから────。
「黙ったまま付き合っていくことだって……できるけど。
でももう僕たちは一緒に暮らしたいぐらい、気持ちが固まってて。
そしてそうするなら、きちんとした形で……そうやって琴音ちゃんを安心させてあげたくて────」
「──だから、結婚?」
挟まれた言葉に、深く、頷く。
雪乃さんから視線を逸らさず、僕はそうした。
しばらくの後、……わかった、と雪乃さんが呟いた。
「でもやっぱり琴音の話を聞いてから──それから葉月くんとあらためて話させて」
そう口にすると、僕が返事をする前に雪乃さんはリビングから出ていってしまった。
ひとりその場に残された僕は、立ったまま、大きく息を吐く────。