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宵闇
第18章 動き出す
車に乗りこんだ僕は、目を閉じて大きく深く息を吐いた。
やっぱり、かなり緊張していたんだなとそんな自分に思う。
話がスムーズに通るだろうとはもちろん思ってはいなかった。
むしろ父さんがあんなに簡単に許してくれたことに驚く。
雪乃さんは、琴音とまず話したいと言っていた────。
携帯を取り出して、彼女に電話をかける。
『──もしもし?』
琴音はすぐに出た。
「あ、僕だけど」
『うん、どうしたの?』
「今から会いに行っていいかな?」
『え? でも今日は用事があるって言ってなかったっけ?』
「うん。それもう終わったから」
『そうなの? じゃあ会いたい!』
急にトーンが上がった琴音のその嬉しそうな声。
思わず顔が綻んだ。
「琴音の家まで行くから」
『わかった』
「うん。待ってて」
『近くまで来たら教えてね!』
「電話する。じゃあまた後で────」
僕は電話を切り、そのまま琴音の住むアパートへ向けて車を発進させた。