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宵闇
第19章 枷


「……うん、でもね」

「え?」

「それでもいいから聞きたいな。
だって葉月くん、いつも私の話聞いてくれるでしょう? 
それって、すごく嬉しいから」

「琴音……」

「聞くだけしかできないかもしれないけど、それでもやっぱり葉月くんの中だけで溜め込んだりはしないでほしいかな、って」


ね? と僕を下から覗き込んできて、視線を合わせてくる。
僕の大好きな、優しい笑顔がそこにあった。


──琴音はこんなにもまっすぐで綺麗なのに。


自分の心の醜さが、いやになる。
思わず目を逸らしてしまい、それから答えた。


「……幻滅するよ」


と。

僕のぐちゃぐちゃした気持ちを知ったら、まさかそんなことを思っていたなんて──と……そう、きっといやな気分になるに違いないと。


「しないよ」


なのに、琴音は即答した。


「どんな葉月くんでも幻滅なんかしないよ?」


ぎゅっ……とまた強く僕の手を握る、どこまでも真っ直ぐな琴音。


「……どうして」

「え?」

「どうしてそんなふうに言い切れるの?」


彼女がそう言うから。
そんな簡単なことじゃないのに、あまりにも普通に、躊躇いも何もなく口にするから、僕は思わずそんな言葉を投げつけてしまった。


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