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宵闇
第19章 枷


「え……だって好きだから」


琴音の答えはとてもシンプルなそれ。
でもなぜか、僕の心の奥に不思議にすっ──と響いてきた。


「葉月くんのこと、好きだからだよ?」

「琴音……」

「だから幻滅なんてしないよ。
どんな葉月くんも知りたいもん」


声だけじゃない。
その眼差しも、とても優しくて。
……心が揺さぶられる。


「だって私、葉月くんの……彼女、でしょ?」


少しはにかみながらも、はっきりとそう口にする。


「葉月くんの気持ち──それがたとえどんなのでも聞きたい」

「琴音……」

「葉月くんのこと、全部知りたいの」   

再び繰り返されたその言葉に、僕の心の中の何かがざわめきだす────。


そのよくわからない、けれど強い衝動を覚え、横に座る琴音を抱き締めた。


柔らかな、身体。
温かな、ぬくもり。
そして琴音の、匂い────。


ああ……。


深く吸い込んだ。
甘い、彼女だけの、僕が大好きなそれを。


……落ち着く。
僕が心から落ち着ける、琴音の匂いだ。


包まれている。
彼女の想いに。


そんな気持ちになった僕は、そっと口を開いた。


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