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宵闇
第19章 枷
「……不安になるんだ、時々────」
それはずっと胸の中だけに閉じ込めてきた気持ち。
好きすぎて、不安になる。
大事すぎて、それを失うことを考えるととても怖くなる。
「幸せすぎて」
はあ……と深い息と共に
「これから先……琴音を失うのがこわい」
弱い心をも、吐き出した。
「……私はどこにもいかないよ」
すぐに返された言葉。
同時に、背中に回された腕に力が込められたのがわかる。
「わかってる」
琴音が僕を愛してくれていること。
それはもちろんわかっている。
「……わかってるよ────」
それでも、時々沸き上がってくるその感情。
今はそうでも先のことなんて誰にもわからない、と。
「でも──いつか僕以上に好きな相手ができたらとか、その誰かに取られたらとか……そんなあるかわからないことを僕は考えて、そして勝手に不安になってしまう」
「葉月くん……」
僕は琴音を身体から離した。
彼女の顔が見られなくて、下を向いたまま、続ける。
「こんな僕……ひくよね」
そう……僕の中にある、こんなにも弱い自分。
琴音にとって頼りになる、彼女をいつも強く導いていける僕でありたいのに────。