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宵闇
第19章 枷
思わず自嘲気味な笑みを浮かんだ僕のその唇に、不意に何か柔らかいものが押し当てられた。
それが琴音の唇だということにすぐに気づいたけれど、この告白のあとのその行為──戸惑う僕の首に今度は両腕が絡められる。
「……ひかない」
そのまま耳元で囁かれる。
「ひくわけないよ」
ぎゅっ……と、腕に力が込められる。
「こんな僕って?
……私が好きな葉月くんに、こんな僕も何もないよ」
「琴音────」
「……ねえ、葉月くん」
真っ直ぐに見つめてくる彼女が本当に綺麗で、思わず見とれてしまった僕に向けて続けられた言葉は────。
「私のこと、見て?」
──え?
思いがけない内容に、勝手に口から呟きが漏れた。
「え……何……?
……ちゃんと見てるよ────」
「じゃあどうして?」
その目が、揺れる。
「どうしてそう決めつけるの?
幻滅するとか、ひくとか──私が葉月くんの一部だけを見て好きになったって、そう思ってるの?
葉月くんは、私をそんなふうに見てるの?」
「琴音……」
「ちゃんと見てっ……!」
潤んだ目。
それでもやっぱり、僕を真っ直ぐに。