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宵闇
第19章 枷
「私の話はあんなに聞いてくれるのに、葉月くんの話……あんまりしてくれないし……」
「別にそんな────」
「ううん、いつもだよ? 葉月くんはいつも私のことばっかり。私のことだけ考えてくれて……嬉しいけど。嬉しいんだけどでも一方的なのって」
……なんか違うよ、と。
微かに震える息を吐く。
「今日だってそう。ほんとならふたりで話に行くことだよね? だって私たちの大事なことなんだもん。
……それどころか、話に行くことすら私、教えてもらってない」
「……っ、それは……!」
琴音によけいな負担をかけたくなかったからだと言い掛けて、はっとした。
……そうか、と。
彼女は、そんな一方的な関係を求めているわけではないんだ。
甘やかされて。
守られて。
そうされた自分はよくても、もし僕だけがひとりで何かを背負うことになるのなら、それは彼女にとっても幸せではないのだと。
ああ────。
『兄』の立場を捨て切れていなかったのは、僕だった。
『妹』としてじゃなく、女としての琴音を求めておきながら、どこかに残っていた兄としての気持ちが、彼女に対して弱音を口にすることをよしとしていなかったのか、と……ようやく、それに僕は。
──琴音。
そのときの僕の気持ちを、いったいどんな言葉で言い表せばいい?
どう言えば、君にこの気持ちが伝わるだろう?
枷が、外される────。