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宵闇
第19章 枷
「……じゃあ葉月くんは、いつか私以外の誰かを好きになったりするの?」
「────!」
その言葉に、彼女の肩を掴んで身体を離し、顔を見て反射的に答えた。
「ならないよ!」
そんなこと絶対にない。
あるわけがない、と何度も繰り返した。
……不意に、琴音が笑う。
「もう」
困ったように、僕の頬を撫でてくる。
「……私もだよ?」
同じだよ、って。
「そんなこと絶対にないよ」
僕と一緒だよ、って。
「……一緒?」
僕の呟きに頷く。
「そんなの私だって思ってたもん。
葉月くんのこと、独り占めしたいって。
……だって葉月くんのまわりには私より大人で、きれいな女の人もいっぱいいるみたいだし……こうなった今でも、正直いつも不安」
困ったように笑いながら。
「葉月くんにいつか私より好きな人ができたらどうしよう、って。
……そういうこといろいろ、ぐちゃぐちゃになるぐらい考えてる」
目を、伏せたままで。
「葉月くんが私のこと好きでいてくれるのわかってる。ちゃんとわかってるんだよ?
葉月くんのこと信じてるし、好かれてる実感もすごくある。それでも────」
「……不安になる」
僕の言葉に頷く琴音。
そう──好きだから、不安になる。
自分にとっての相手はもうかけがえのない存在だから。
その存在が失われたらどうしたらいいのか……自分がどうなってしまうのかわからなくなるぐらいだから。
……だから────。