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宵闇
第20章 条件

「中、入っていい?」
「あ、うん」
身体をずらすと葉月くんがするりと中へ入ってきて、後ろ手でカチャ、と鍵を閉める。
次の瞬間、私の身体は彼に抱き締められていた。
「……大丈夫?」
もう一度ゆっくりと聞かれて、胸がきゅうっとなった。
「うん……」
私からも葉月くんを抱き締める。
葉月くんの匂い。
そう、私の大好きな。
それを思いっきり自分の中に満たす。
「……ちゃんと言うからね」
「ん」
葉月くんは少しだけ腕を緩め、それから私に口づけた。
その優しさに。伝わる想いに緊張がほぐれていく感じがする。
「……近くにいるから」
唇を離して囁かれ、私は葉月くんの目をしっかりと見て頷いた。
「だからいつでも呼んで?」
「ん……」
うん、と葉月くんが笑う。
その笑顔に本当に癒される。
……失いたくない、私の大切なひと。
葉月くんは私の頭をいつものように撫でて、そして静かに玄関から出て行った。
……葉月くん、ありがと。
心が満たされた私はそう呟いて、そして、ママが来るのを待った。
さっきまではあんなに落ち着かなかったのに、今は早く話がしたくなっていた。

