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宵闇
第20章 条件

時間を少し過ぎた頃、再びドアホンが鳴った。
テレビ画面でチェックしてからドアを開けると、そこには笑顔のママ。
「琴音! 元気~?」
いつものママのその様子。
私もつられて笑顔になった。
加奈と私の共同スペースになっている10畳程度のLDKに通すと、ママはぐるりと見渡してそれから椅子へと座る。
「思ってたよりきれいにしてるんじゃない?
……それともママが来るから慌てて掃除したパターン?」
「んー。さてどっちでしょう~?」
笑いながら答えると、ママもにっこりと返してくれた。
「加奈ちゃん、お友達のところに行ったの?」
「あ、うん。そう」
「気を遣わせちゃったかなあ。
じゃあこれ、あとで加奈ちゃんと一緒に食べてね」
そう言って、持っていた紙袋の中から箱を取り出す。
「──あ、これ私の好きなお店の!」
家の近くのお菓子屋さんの包装紙にテンションが一気にあがった。
「ありがとうママ!」
「……琴音がなかなかうちに帰ってこないから、来るついでに買ってきてあげたまでよ~」
その言葉と、私をちらりと見るその目。
確かに最近は全然家に帰ってなかった。
「う……ごめんなさい」
「お父さんも琴音に会いたがってるんだから」
お父さん。
葉月くんと一緒で私にいつも優しいお父さん。
寂しがってる様子を想像して、胸が少しちくりとした。

