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宵闇
第20章 条件

こくりと頷く私に向けられたママの言葉は続く。
「琴音が葉月くんに懐いてたの知ってる。
葉月くんも琴音に優しかったし、ふたりの仲がよかったことはよくわかってたわ」
「ん……」
「だからよけいに思うのよ。琴音の好きって、本当にそういう類のものなの?
ただ単に仲がよくて、それを勘違いしてるだけじゃないの?」
「ママ……」
「結婚って仲良しごっこじゃないのよ? 生活なの。
いろんなことがあるわ。楽しいことだけじゃない。
そういうのもちゃんとわかってる?」
ママが、真っ直ぐに私を見てる。
その目を逸らしちゃだめだと思った。
「うん」
一言答え、大きく息を吐く。
それから私は続けた。
「……ママの言うとおり、結婚って楽しいだけじゃないと思う。
大変なこと、きっといっぱいあると思う」
ママは黙って私の話を聞いている。
「それでも好きな人とだったら──葉月くんと一緒なら、何があっても大丈夫だとも思う」
……ママ、お願い。
「私も葉月くんもすごく悩んだの。
葉月くんからは、私たちは簡単な気持ちで付き合っていい関係じゃないんだ、って言われて。
悩んで、いっぱいよく考えて……それでもやっぱり私は葉月くんが大好きで。
……葉月くん以外の人も考えたことあったけど、でも無理だった」
お願い、わかって。
「葉月くんも私じゃなきゃだめだって言ってくれたの。だから……」
「だから?」
「……だからお願いママ……!
葉月くんとの結婚を認めてください!」
葉月くんとこれからもずっと一緒にいたい私の気持ち。
それだけはどうしても譲れない。
「お願いします!」
はじめてママに頭を下げたと思う。
でも、何度だって……ううん、何だってきっと、私はできる。
そう──この願いを叶えるためなら、何だって。

