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宵闇
第20章 条件

そして────。
「……葉月くん」
葉月くんの名前を呼んだ。
「琴音のこと、どうかよろしくお願いします」
そう言って、頭を下げる。
「……ママ……」
私は、ママのその姿を見て。
私のことで人に頭を下げているママの姿を初めて見て。
「──はい」
そう答える、葉月くんを見て。
溢れる涙を抑えることなんてとてもできなくて。
「私が言うのも何だけど、琴音は本当に優しい子なの。
小さいときからいつも私を気遣ってくれるような子だったの」
ママも涙声になってる。
「本当は手放したくなんかないぐらい自慢の娘なのよ……」
「──っ、ママ……!」
私の頬を涙が次々と伝う。
「……知ってます。一緒に住んでるときから、琴音ちゃんのそういうところ気づいてたし、それは今も変わらないから」
「……そうね。琴音のこと、きっともう私以上に葉月くんは知ってるんでしょうからね……」
そう言って、ふふっと泣き笑いみたいな表情を見せるママ。
「僕は琴音ちゃんがいつでも安心して甘えられるような……そんな存在になりたいと思っています」
「……ありがとう」
ママが、目元を拭う。
「ふふ……。なんだか、寂しいような安心したような……ちょっと複雑な気持ちだわ」
「僕たちが一緒になっても今までと何も変わらないから。
だから雪乃さんが寂しがる必要なんかないです」
「ああ……そうね。本当にそのとおりね────」

