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宵闇
第21章 月影
葉月くんがソファーに腰を下ろす。
そっと手を離し、コーヒーをいれるためにキッチンに立った。
「……何?」
葉月くんがずっと私を見てる。
「ん? なんか、いいなって思って」
「え?」
「琴音がキッチンに立ってるとこ見るの」
「そんなの今までだっていっぱい見てない?」
家で一緒に住んでたとき、とか。
「うん。そのはずなんだけどね」
ふっ、と笑って。
「気持ちの問題かな」
「気持ち?」
いれたコーヒーを葉月くんの元に運びながら、聞く。
「うん」
受け取った葉月くんの右側に私も座った。
「……ほんとに一緒になれるんだな、って思って」
「葉月くん────」
私をちらっと横目で見てから、コーヒーのカップを持ったその綺麗な手。
……見とれる。
「美味しい」
その言葉に、私もカップを手にして一口飲んだ。
「ん」
同意し、にっこりと笑いかける。
──と、カップが不意にテーブルへと置かれた。
はあ……と息を吐きながら、両手で顔を覆い、俯く葉月くん。
「なに?」
どうしたのかなって思って、私もカップをテーブルに置いてから、葉月くんを下から覗き込む。
指の隙間からちらっと私を見てくる、綺麗な目。
「……やばい。嬉しい」
そんな呟きと共に。
「本当に琴音と一緒になれるんだね」
続けられた再びのその言葉に、私は、にやけそうな口元を両手で押さえて頷いた。